デジタル化支援digital


新型コロナウイルス感染症の影響の長期化に加え、労働人口の減少に伴う人手不足や賃金上昇など、中小企業を取り巻く環境は不透明な状況がつづいています。

このようななか、デジタル技術を活用することで皆さんの負担が減り、新たな時間を事業活動や経営に充てることにより生産性の向上や販路の拡大などウィズコロナ時代のビジネスへのチャンスが広がります。

川口商工会議所では、会員事業所の皆さんがIT化を進めていく上で、さまざまな段階で生じる課題に対しての伴走型による解決やIT人材の育成等の支援を実施していきます。また、川口市をはじめとする公的支援機関や民間事業者と連携し、地域一体となった支援体制を確立しながら本市産業振興への貢献とデジタル分野においても「信頼される地元の支援機関」を目指します。

開催予定のITセミナー一覧 <デジタル化を全力応援!>

川口商工会議所では会員事業所様のデジタル化を全力で応援するため、レベルや目的に合わせた様々なセミナーや研修会を開催しています。

目安として以下のように設定しています。

レベル:初級編、中級編、上級編の3つ
目的:機運醸成セミナー、身の丈IT普及、付加価値創出、IT人材育成、その他

レベル 目 的 開催日時/場所 内 容
    次回開催までお待ちください。
 

身の丈ITシリーズ

これから毎月、さまざまな業種業態で取り組みが進んでいるDX(デジタルトランスフォーメーション)の様子をご紹介いたします。

中小企業診断士・ITコーディネータ 長戸 美樹

 

シリーズ⑩コロナ禍だからこその「オンライン展示会」「オンライン工場見学」

製造業ではこれまでも、地元の小学生等を対象にした「工場見学」をしていました。また卸売業・製造業では、新商品をバイヤーに見て選んでもらう「展示会」を開催していました。 ですが、コロナ禍のために集合型のイベントができない昨今、この状況を逆手にとって「オンラインで見学する仕組み」が進化しています。 今回はこの仕組みを紹介するとともに、皆さんに「ご自分のビジネスにどのように生かしたらよいか?」をぜひ考えていただきたいと思います。

(1)オンライン工場見学・展示会のメリット

対面での直接のやりとりはできないものの、以下のように様々なメリットがあります。

特に、工場見学用の安全な通路等が設置されていない中小製造業の現場では、安全面のメリットも非常に高いです。

工場見学・展示会共通

移動時間や交通費がかからない

非対面となり、コロナ禍でも衛生上の安全が保たれる 等

工場見学

高温や危険物に近づかない、安全な状態で実施できる(ヘルメット等着用不要) 等

展示会

他のお客様の商談とバッティングしない

商談を録画しておき、あとから内容を確認できる 等

 

(2)必要な機器類や撮影時の注意

ごく簡単に実施する場合、スマホ片手に工場内や会場を歩き、現場の様子を見てもらうだけでも十分です。説明は、スマホ撮影者が歩きながら声を出せばOKです。

この場合、スマホ操作に集中すると、工場内で転んでしまうこともあるので、ケガには十分に注意しましょう。また、動画撮影と同時に配信するので、円滑に動画を流し続けるためには現場のWi-Fi(高速回線)利用が望ましいです。

工場内や展示会上の様子を見ていただいたあとは、パソコンを利用したオンライン会議形式に続けます。そこでは、質疑応答を受けたり、商談を実施したりしていきます。

また、自分で撮影機材を用意する方法、プロに撮影を依頼する方法もあります。この場合は、撮影した動画を編集して音楽を入れるなどの加工をしてからWEB上にアップします。

動画編集・音楽挿入等については、便利なアプリが用意されているので、自分でチャレンジすることも可能です。今回は機材説明・アプリ紹介等は割愛しますが、ぜひご自分で検索していろいろ調べてみてください。

また、オンライン工場見学や展示会の撮影・編集を手掛けるIT事業者もありますので、ご興味がある方は川口商工会議所にお尋ねください。

(3)オンライン工場見学の事例

川口商工会議所ではこの2月28日まで「第4回川口オープンファクトリー」を開催していました。ものづくりの企業が集積する川口だからこその取組ですね。

残念ながら、ホームページ上で3D化された工場を自由に見学できるコースは終了しています。

また、工場見学でVR体験ができるページも、最近は多く見受けられます。

VRは「Virtual Reality」の略で、「仮想現実」と呼ばれています。ゲームの世界ではお馴染ですね。VRによって「その場にいながらにして、限りなく、実体験に近い体験が得られる」のです。

たとえば、川口市内の印刷・WEB制作会社である巧和工芸印刷株式会社の事例紹介ページでは、茨城県の工場内の様子がVRで360℃の角度からご覧いただけます。

画像引用元:巧和工芸印刷株式会社 YouTubeサイト

*番外編

巧和工芸印刷株式会社のYouTubeサイトでは、川口市の消防局とコラボした「VR 消防士なりきりVR体験 360カメラ」の動画も掲載されています。高いところから降りるシーン等、迫力満点です!

ぜひこのサイトを、スマホを動かしながらご覧になってみてください!パソコンからご覧の場合は、下の画像の左上にある「四方向への矢印」をマウスで触ってみてください。

画像引用元:巧和工芸印刷株式会社 YouTubeサイト「VR 消防士なりきりVR体験 360カメラ

 

(4)オンライン展示会の事例

今年度は、埼玉県でもさまざまなオンライン展示会が実施されました。毎年冬に、さいたま新都心のさいたまスーパーアリーナで開催される彩の国ビジネスアリーナも、今年はオンライン開催でした。

画像引用元: オンライン彩の国ビジネスアリーナ2022

* 現在、オンライン閲覧は終了しています。

このような大型展示会でなくても、「自社の新商品をお披露目する展示会を、自社で撮影して編集しYouTubeにアップする」ことで、簡単にオンライン開催が可能です。

なお、「新商品情報を、特定の人にだけ見てほしい」場合は、URLを知っている人のみが観ることができる設定をすることも可能です。

* 動画の公開設定を変更する方法は、Googleの以下のサイトをご参照ください。

YouTubeヘルプセンター 「動画のプライバシー設定を変更する

 

(5)まとめ

コロナ禍でオンライン工場見学・展示会が行われることが当たり前になってきました。ですが、その背景には、動画撮影・編集等が手軽に実施できるようになったDXの進化があるのです。

品質にさほどこだわらない、逆に素人ならではの臨場感を出したい場合は、社員によるスマホでの撮影・その画像の一般公開という方法を取れば、特別な費用もかかりません。第一歩を踏み出す時には、ぜひこの方法をご利用ください。

その後、大規模なオンライン展示会に出展する等の場合は、プロのチカラを借りた「見やすい、わかりやすい動画」を準備すればよいのです。

または、社員に「動画撮影・編集」を勉強させ、かつ編集用ソフト等を会社で用意することで「動画関連作業の内製化」も可能です。自社で頻繁に新製品等の動画を用意したい場合は、内製化をご検討ください。

自社の状況に合致したオンラインビジネスの活用に、ぜひ今の時期に取り組んでいただきたいと思います。その際には、川口商工会議所の窓口相談・専門家派遣等をお気軽にご利用ください。

 

 

シリーズ⑨ソーシャルビジネスでのDX活用

ソーシャルビジネスとは「地域を限定せずに、ビジネス的手法を用いて社会問題解決を目的とした事業」と言われております。ビジネス的手法とは、寄付金等だけに頼らずに「自社で事業収益を上げることで継続的な社会支援を可能にする」ことを指します。

また似ている言葉として、コミュニティビジネスがあります。こちらは「地域を限定した」活動を指すのが一般的です。

いわゆる「ボランティアの任意団体」とは一線を画していることを押さえた上で、この後の話を進めていきます。

川口市でも、市内中小企業の新たな発展モデルの構築を目指す交流会2021が昨年開催されており、地域をよりよくするための活動を担う事業者を支援しています。市では、このような活動を行う市内事業者等を「地域貢献事業者」として認定し、市内外へPRすることで事業者のイメージ向上や市内産業の活性化を目指しているとのことです。

それでは、この地域に貢献する事業=ソーシャルビジネス・コミュニティビジネスでのDX活用を考えていきましょう。

(1)ソーシャルビジネスの法人形態

ソーシャルビジネスでは、ビジネス的手法を用いて、法人として利益をあげ決算処理を実施します。特定非営利活動法人(NPO法人)の形をとることも多いです。

「特定非営利活動」とは「無報酬で働く」わけではなく、「儲かった利益を団体の構成員に分配しない=配当金等はない」ことを指します。

社会的貢献を目指しそのうえで「お客様を獲得し、利益をあげる」にあたり、一般の企業と同じようにDX推進による生産性向上・顧客満足度の向上は欠かせません。

例1:NPO法人

この記事の筆者である私も、特定非営利活動法人の副理事長を務めています。「埼玉県の中小・小規模事業者のDX推進支援」をミッションとして掲げ、組織を運営しています。

特定非営利活動法人埼玉ITコーディネータ

 

例2:合同会社

株式会社よりも緩やかな運営ができる合同会社も、ソーシャルビジネスに向いた法人形態です。

さいたま市のシゴトラボ合同会社は、シニアの生の声をいかした商品・サービス開発や、マーケティング事業、また全国各地で職場づくりやコミュニティづくりのサポートを実施しています。

今年の2月、シゴトラボではシニア向けに「スマホ活用講座」を開催し、私も講師を務めました。参加する皆さんは元気いっぱい、セミナー終了後も並んで質問してくださいます。講師の私もやりがいがあります!

シゴトラボ合同会社

 

(2)ソーシャルビジネス運営での問題点

ソーシャルビジネスの運営では、特定の場所に出勤して全員で一緒に仕事をするようなことはほとんどありません。しかし、通常の企業と同様にお客様のために仕事をします。

そこで組織運営上の問題点としては、以下が想定されます。

1.組織形態にあわせた決算処理

たとえば、NPO法人は収益事業と収益事業以外の所得を区分経理する必要があります。 *収益事業以外の所得:年会費 等

2.遠隔地のメンバーとの情報共有・意思決定

普段メンバーと顔を合わせて仕事をしないため、業務を円滑に進めるための環境づくりが必要です。

3.お客様を獲得するための広報宣伝活用

社会貢献の結果として利益をあげるためには、有償の仕事を発注してくださるお客様が必要です。通常の企業と同じようにマーケティング策を実行していきます。

 

(3)問題点を解決するためのDX活用

これらの問題点解決には、DX活用が有効です。業務の情報等を紙に書いて代表者の自宅や事務所に置いておいても、他のメンバーは見ることができません。

こんな時こそ、クラウド活用が有効です。IDとパスワードがあれば、どこからでもログインできるクラウドサービスは、テレワークに限らず「メンバーが各所で働くソーシャルビジネス」こそ、利用が必須となります。

以下に、NPO法人運営や遠隔地の仲間との仕事で、私自身が実際に利用しているサービスをご紹介いたします。安価な価格や無料で利用でき、費用対効果は抜群です。

問題点 解決策
組織形態にあわせた会計処理

NPO法人向けクラウド会計ソフトの活用

例)会計ソフトFreee+NPO会計支援アプリと連携、年間5万円程度

遠隔地のメンバーとの情報共有・意思決定

グループウェア・チャットツール・オンライン会議の活用

例1)サイボウズ チーム応援ライセンス

年間9,900円(税抜)で、文書保管・ワークフロー等の機能が利用可能

例2)チャットワーク

年間1人6,000円(税抜)でビジネスプラン契約、書類・写真等の添付ファイル検索が便利、スマホで手軽にやり取りができる

例3)ZOOM

年間約12,000円で利用できる「プロ」契約で100人まで同時にオンライン会議が可能であり、コロナ禍のビジネスでは必須

広報宣伝活用

無料・安価なSNSやWEBサイト活用

例)アメーバブログ

アメーバサービスの一環として読者が集めやすく、かつ無料で利用できる。

NPO法人ねこけん:動物保護団体、寄付を募りながらもオリジナルのマグカップ・Tシャツ等を販売する収益活動を実施している

 

(4)ソーシャルビジネスでも補助金を活用できる

昨今、経済産業省の補助金につき、一部でNPO法人や社会福祉法人など、いわゆる「株式会社でない法人」でも利用可能になりました。

特に、IT導入補助金は、会計ソフト導入やECサイト構築等で利用できますのでお勧めです。小規模事業者(サービス業の場合、従業員5人以下等)であれば、販売促進費用として小規模事業者持続化補助金が利用できます。

その他、補助金活用についてご質問があれば、川口商工会議所までお問い合わせください。

 

(5)ソーシャルビジネスでDXを運用するのは誰か?

ただ、ここで問題になるのは、この解決策を誰が実行するか?です。DXはツールを入れるだけでは動きません。運用ルールを決め、誰かが責任者となる必要があります。

通常、NPO法人では、スタッフに固定の給料を用意しないケースが多く、業務に必要なDX運用の引き受け手がいない場合があります。

ですが、経理担当・WEBサイト更新担当など、ソーシャルビジネスの重要なポイントを支えるスタッフには、年間数万円程度であっても些少のフィーを支給しましょう。

ソーシャルビジネスは、ボランティアの任意団体とはまったく異なります。地域貢献により収益をあげ納税するという「法人格をもった団体」です。通常の会社と同じように、会社運営の根幹となる業務をないがしろにせず、重要業務は担当者を決めて運営していきましょう。

 

(6)まとめ

ソーシャルビジネスは、少子高齢化・貧困・動物保護などの「社会問題」、DX推進など「自治体・民間企業・学校等の日本全体で取り組むべき問題」を支えるために、今の我が国にとって必要不可欠です。

民間の中で特定分野の知識・経験に秀でた人が、社会に貢献するにあたって、ぜひソーシャルビジネスの形態を上手に活用していただきたいと願います。

その際、今回ご紹介したITツールを適切に利用して、ソーシャルビジネスに関わるみなさんの業務がより円滑に進むことを願ってやみません。

 

 

シリーズ⑧サービス業(保育園)でのDX活用

保育園や幼稚園等、いわゆる就学前の乳幼児を預かる施設・法人は、子育て世代に当たる年齢層の保護者にとってはなくてはならない存在ですね。いま、その園向けに、現場の生産性を向上するためのソフトがいろいろと発売されています。

行政からの補助金で成り立っている園にとって、一クラスの乳幼児の定員上限や、保育士の人数下限があります。つまり、一般的な会社がとる生産性向上策である「売上向上、原価削減、販管費削減」が、園では対応不可なのです。

そこで、保育園・幼稚園等のDX活用では、「生産性向上=人手がかかっている作業を自動化する」「付加価値向上=空いた時間で、保育士が乳幼児や保護者とより向き合い、保育の質を高める」という2つの視点が重要になります。

保育園・幼稚園等の業務における問題点

1.遅刻・欠席・お迎え等の連絡が特定の時間に集中し、その電話対応に人手がとられる

2.一時保育・延長保育が発生し、料金の計算が面倒である

3.紙のプリントが多すぎて、管理が行き届かない

4.家庭向けの連絡帳を、保育士が手書きで書く負担が重い 等

これらの毎日の作業が、DX活用で負担が減るとしたらいかがでしょうか?これらのアナログ作業を解決できるソフトがあるのです。

*勤怠管理や業務連絡の省力化は、一般企業でも取り組むべき課題ですね。

 

(1)株式会社ビズウインド「ママれん!」シリーズ

無料から月額1万円までという大変安価な金額で、基本機能が使えます。

画像引用元:株式会社ビズウインド ママれん!シリーズ

メール・ノート機能では、いわゆる保育に関わる「園と保護者のやりとり」がすべてデジタルとなります。仕事で忙しい保護者が、自宅に帰らなくても、通勤帰りの電車の中等で「園からのお知らせ」を読めるのです。紙を失くすこともありません。延長保育の連絡も、電話を利用することなく、メールで簡単に発信できます。

シフト管理では、登園してくる乳幼児の人数に応じて、配置すべき職員の数を自動で割り出し、適切な職員の配置を自動化できます。

*このシフト管理は、来店客の予測人数にあわせて人員配置を組む飲食店等でも実施していますね。

 

(2)株式会社コドモン「CODMON(コドモン)」

園向けソフトではNo.1のシェアがあり、機能も充実しています。費用はある程度はかかりますが、人を採用した時の給与支給総額を考えれば、費用対効果は抜群です。

画像引用元:株式会社コドモン

メール連絡・文書やりとり等の基本機能はもちろん、たとえば「検温・感染症チェック」「写真販売」「バス運行管理」「給食献立管理」などの機能も充実しています。

たとえば「写真販売」では、運動会でカメラマンが撮影したたくさんの写真の中から、自分の子供の顔が映っているものだけを自動選別して、保護者が必要な写真だけをダウンロードさせることが可能です。その際に、1枚当たりの単価を設定しておけば、自動で申し込み金額の集計ができます。これは乳幼児の顔認証システムを導入しているため、写真の自動判別に応用できるのです。

さらに凄いのが「デジタル監査」の実現です!通常の園にとって、行政への報告や監査などは大変な負担になっています。それが、コドモンを利用すれば、「大量の紙書類をファイリングし、チェックをうける労力」から開放されるのです!

これはコドモンがいかに園の業務に寄り添い、信頼性の高い業務ソフトであるかの証明になりますね。

 

(3)園向けソフト導入には、IT導入補助金が使える!

園向けソフトは他にもいろいろあり、自社にとって必要な機能を十分に検討して選んでください。

また、都道府県や市区町村などの自治体の補助金や、国の補助金であるIT導入補助金が利用できますので、実質負担額を抑えることが可能です。

ぜひソフト導入を考えた際には、ソフト販売会社に「補助金を利用したい」と相談してみてください。

 

(4)現場のソフト利用には、研修が必要か?

20代~30代程度の保育士であれば、スマホやタブレット操作等のデジタル作業に慣れており、実際にソフトを触ってもらえれば問題なく対応できる場合がほとんどです。乳幼児が昼寝をしている間に「タブレットを利用して、日報を入力する」など、残業抑制に多大な効果があります。

また、比較的高齢の保育士であっても、ソフト販売会社からの研修やサポートで使えるようになります。

複雑で現場で使いこなせないものであれば自然と淘汰されてしまいますが、園ソフトは「保育士の負担を軽減できる」わかりやすい画面が特徴となっており、その点は安心です。

 

(5)最終目的は「保育士・経営者と乳幼児・保護者がハッピーになる」ことである

この少子高齢化の時代、子供を産み育てることには我が国の未来がかかっています。この負担を「保育」に関わる人たちだけにかけることなく、ぜひ社会全体で支えていきたいものです。

園向けソフトは、単なる「労力削減・生産性向上」だけにとどまらず、「保護者と園に時間的余裕が生まれることで、気持ちが穏やかになる」「コミュニケーションの質が向上する」というプラスの効果が高いのです。

業務に関わる全ての人の満足度向上につながり、その最大の効果として「乳幼児の笑顔・健康」がみんなの目に見えてきます。

* 企業のDX活用も、最終的には「従業員が前向きな業務にかける時間を増やし、仕事において人間的に成長する」「それにより、取引先とのコミュニケーションも円滑に進み、会社の業績も伸びていく」という流れにつながるはずです。

ぜひ、一般企業のみなさまも、この園ソフトの事例を読みながら、「自社の従業員や取引先の笑顔」を目標にしたDXへの取り組みを考えていただければ嬉しいです。

 

 

シリーズ⑦サービス業(塾・教室・サロン等)でのDX活用

こどもの習い事や大人になってからのカルチャースクールなど、いわゆる「先生」と呼ばれる立場の人が生徒を教える形の事業はいろいろありますね。自宅開業・個人で教える形態が可能であり、手軽に始めることができますし、副業としてもお薦めできます。また最近は、オンラインに特化した教室もあります。

ご一緒にいろいろ見ていきましょう。

(1)地域に根差した英語教室でのインターネット活用

楽器や語学など、先生からその場でアドバイスをうけて直していくスタイルの習い事では、やはり自宅や通勤先から通いやすい地元の教室が便利です。

ですが、地元の教室とはいえ「教室がネットで検索できない」「お客様との連絡手段が、電話や紙しかない」のでは、生徒や保護者の方との接点が十分に持てません。

Giggle Assist 川口(サイトより引用)

川口駅から徒歩数分の場所にある、子供向け英語学習のGiggle Assist 川口では、2021年7月にWebサイトをリニューアルし、以下の工夫をしています。

1.「世界に羽ばたく金のタマゴを育てます」というキャッチフレーズがわかりやすい

2.ロゴやイラストが、健康的かつ知的で保護者や子供から見ても親しみがある

3.「会員専用」ページを設けて、会員向け連絡手段をネット上に用意している

4.GoogleMapの地図を載せており、場所がわかりやすい

5.「みどり先生のコラム」として、教える人の考え方を紹介している

6.コース内容や価格が明確に示されている 等

通ってもらえるお教室を目指すのであれば、ぜひこのように「①必要項目が網羅されている、②読みやすく理解しやすい」サイト作成を目指してみてくださいね。

 

(2)オンラインに特化した教室運営

今回皆さんにご紹介するにあたり、いろいろなオンライン教室を調べました。そうしたところ、シンプルでありながら、多くのサービスが盛り込まれた書道教室を発見しました。

奈良県の株式会社日本製墨書遊という会社が運営する「オンライン書道教室」です。従業員は90数名の中堅企業です。

書道用品店「書遊」の書道レッスン(サイトより引用)

このサイトは、以下のような特徴があり、先生と生徒が離れた場所にいてもレッスンができる工夫がされています。

1.お手本の用紙はインターネットからダウンロード、自分で印刷する

2.プリンターを持たない人のために、お手本の郵送サービスをしている

3.スマートフォンを利用して画像を先生に見せ、その場でアドバイスが受けられる

4.郵送による「添削」サービスもあり、先生に直接直してもらえる

5.自社オンラインショップで、書道用品がお得に購入できる

6.会社が認定した講師による安心できる指導が受けられる 等

この書道教室は、オンラインという「非対面の不安」をとりのぞく工夫が満載です。「お道具を持参して教室に行かなくても、しっかりと練習ができる」と消費者が納得するレベルとなっています。

この書道教室と自分を比較して、「自分ならネット上でどこまでできるか?」をぜひ考えてみてください。

(3)オンラインでのお料理教室

東京都墨田区で、女性一人できりもりしている和食のお店があります。私はこのお店のファンで、何度か通っています。「みかづき」さんでは、コロナ禍の逆境に立ち向かうため、「食材を事前に郵送しておく、動画お料理教室」を始めました。

「和のごはん みかづき」オンラインお料理グループ(サイトより引用)

運営方法は、以下の通りです。

1.Facebookグループ(無料)で、メンバーを募る

2.毎月、旬の食材を利用したお料理教室動画を作成、YouTubeで繰り返し閲覧できる

3.食材は事前に自宅に届き、生徒は動画と同じ材料を使って自宅で調理できる

4.単発でも、年間を通じてでも参加できる(年間受講料は割安)

5.「みかづき」さんが、日頃お店で出す食材や料理も紹介される

6.無料の「1分間お教室動画」をYouTubeで公開しており、お試し受講ができる 等

1分間お料理教室「イカの肝炒め」をぜひ、リンク先からご覧ください。このような工夫も、オンライン料理教室申し込みのハードルを下げてくれます。

(4)まとめ

英語教室・書道教室・お料理教室の3つをご紹介しましたが、どの教室もインターネットを味方につけて「自分の強みをしっかりアピールしている」ことが伝わってきます。

動画閲覧・資料ダウンロード・ECサイトとの連動など、世の中にあふれるインターネット系のサービスを、さまざまな工夫のもとに利用できます。

このようなサービスを始める場合、動画撮影はちょっと難しいかもしれません。ライトの当て方や声の大きさ、編集など、ポイントがいくつかあります。最初は仲間にヘルプを頼んだり、いちどプロに頼んでコツを教えてもらったり・・・ぜひ怖がらずにチャレンジしてみてください。

ぜひ自宅でお教室をしている先生方、今回の3つの事例をもとに「自分ならどんな風にできるか?」を考えてみてくださいね。川口商工会議所では専門家への相談もできますので、お気軽にご利用ください。

 

 

シリーズ⑥ 卸売業でのDX活用

卸売業、我が国でこれまでたいへん重要な役割を果たしてきました。卸売業は、小売業とメーカーの中間にたち①大量仕入→少量販売、②在庫保管、③小売業の販売促進支援(リテールサポート)、④金融等の役割を担ってきたのです。

この4つの機能が、DXの活用により進化してきています。また、消費者への直販など、事業再構築にチャレンジするケースもあります。2つの事例をご一緒にみていきましょう。

なお、これまでの回では、小売業・サービス業・飲食業をとりあげており、その際には「私自身が消費者として体験した事例」をお話してきました。今回からは、BtoB(企業対企業)をテーマにするにあたり、私がコンサルタントとして支援した事例をご紹介いたします。

 

(1)倉庫での作業ミス・出荷ミスをなくす

私がものづくり補助金を使って、オートバイのタイヤを扱う卸売業の支援をした事例をご紹介します。その会社は2019年、都内から埼玉県に本社を移転しました。売上増加に伴い、物流倉庫の拡大が必要になったからです。

オートバイのタイヤは、タイヤの溝の形状やサイズ等、細かい違いがあります。ベテランの作業担当者は目視で見分けることができますが、新人ではそうはいきません。商品別に棚に置かれていますが、間違った品番が置かれているケースもありました。そのため、誤出荷や積み残し等が発生していました。

そこでその会社は、タイヤにセンサーをとりつけバーコードでタイヤを見分ける仕組みを構築したのです。タイヤのピッキング時と出荷時に、バーコードでチェックをすることにより、作業効率・正確性が格段にアップしました。その「IoTを活用した在庫管理・出荷管理システム」を構築するにあたり、ものづくり補助金を利用しました。

この会社は「夕方5時までの注文は、当日出荷」というサービスを以前より実施していました。売上拡大に伴い取扱量が増加してもなおこのサービスを提供し続けるためには、ITを使った仕組みを構築せざるをえませんでした。新社屋で倉庫スペースは倍増しましたが、物流担当者の人数は増えていません。

(2)卸売業が消費者直販に進出する

私が支援しているアパレル雑貨の卸売業があります。この会社は創立100年を迎えた老舗企業ですが、売上高はピーク時の半分以下となっています。2年前には少し売上が伸びたのですが、その理由は「競合企業の閉鎖により、顧客が流れてきた」ためでした。

コロナ禍で小規模衣料品店の閉鎖が続き、このままでは売上がさらに減少することは避けられません。そこで従来から考えていた「小売業への進出」を実行に移すことにしました。

具体的には、消費者向けのECサイト開設です。

その時にコンサルティングに入った私は、「小売業向けECサイトを、卸売業にも活用したらどうか?今はコロナ禍で展示会も開けず、対面での商談もできない。一つのECサイトで、卸売と小売を同時に実施すればよい」とアドバイスさせていただきました。商品の写真や説明文は全く一緒で、相手が小売店か消費者かによって「掛け率」を変える仕組みをサイト上で構築したのです。ようは、相手が小売店の場合は「卸売」となり、低い掛け率で自動的に計算されます。

これまでは紙とFAXで受発注していたものが、ECサイト形式のオンライン入れに変わるのです。この仕組みを、小規模事業者持続化補助金を利用して構築していく計画です。

(3)補助金の活用

ドラスティックな事業改革が求められている卸売業では、ぜひ「呼び水」としての補助金活用もご検討ください。初期投資の一部を補助金で補完することで、新規事業立ち上げに弾みがつき、資金繰りの円滑化につながります。

卸売業での補助金活用例を、以下にご紹介します。

補助金名 対象業務 活用例
小規模事業者 販売促進 CMS*を利用したサイトの新規制作
IT導入補助金 事務作業でのIT利活用 在庫管理・販売管理・会計を連動させるソフトの導入
ものづくり補助金 新商品・サービス開発(既存事業も可) IoTを用いた在庫管理サービスを開発による倉庫内作業の改革
事業再構築補助金 新商品・サービス開発(新分野進出・業態転換等) 卸売業の倉庫部分を改築し、小売店舗とする

*CMS:Webサイトの構築・管理・運用を簡易に実施する仕組み。WEB上でサービスにログインし、文字や画像を簡単に書き込むことができる。WordPress等が知られている。

川口商工会議所では、上記の補助金について専門家に相談できます。専門家のアドバイスをうけて事業計画を策定することは、たとえ補助金を使わないとしても、自分のビジネスのブラッシュアップとなりますので、ぜひご利用ください。

 

 

シリーズ⑤ インターネット販促策でのDX活用(後編)

前回は、無料でスタートできる販促策を実施するための「前提条件」についてご一緒に考えました。皆さんの会社やお店では、前提条件は整っていましたでしょうか?

InstagramやFacebookなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)の活用方法を勉強しつつ、前提条件を整えているあいだは、ぜひSNS活用の「助走期間」としてみてください。今回はSNSの活用事例について、2回シリーズの後編としてお伝えします。

(1)まずは自分で体験してみる

今、オンラインサロンが活気づいています。オンラインサロンとは、「中心となる人物がWEB上でメンバーを集めて、自分の得意分野・専門分野の情報を発信し、コミュニケーションを深めていくグループ」「最終的には、主催者の商品を販売するなど、営利が発生する」ものです。月会費数千円をとる有料のもの、無料のものなど、いろいろあります。まさにSNSの有効活用策の一つです。

実は半年前に、ある事業者様から「自分は茶道・華道が得意で、和文化を中心としたオンラインサロンをやってみたい」と相談を受けました。私が「有料でやりたいのですか?」と聞いたら、「まだ決めていませんが、簡単に有料で出来る仕組みがあるんですか?」と質問されました。そしてその事業者さまは「普段からSNSは使っていなくて、オンラインサロンにも参加したことがない」とおっしゃるのでビックリしてしまいました・・・。

私はまず「他の方が主宰するオンラインサロンに参加してみて、どんな風に運営しているかを体験してみてはいかがでしょうか?」とアドバイスしました。

WEB上でグループメンバーを集めて、定期的に役に立つ情報を発信して、会員のみなさまが満足してくださり、商品を買ってくれる・・・そのためには「会員のみなさまにファンになってもらう」ことが何よりも大切で、知識や経験をひけらかして上から目線で教えるのはダメなのです。その事業者様はオンラインサロンに参加したことがなく、どんなやり方が成功しているか?の研究を、まったくしていなかったのです。

私の文章を読んでくださるみなさまには、ぜひ「お客様をファンにして、お客様と一緒に発展していく会社・お店づくり」を目指していただきたいのです。そのためには、まずはなんでも「自分が先に、顧客の立場で体験してみること」です。勉強期間・助走期間なしにいきなり挑戦して成功するような甘い世界は、どこにもありません。

(2)Facebookの活用方法

比較的年齢の高い人が文字を中心としたコミュニケーションをとる時には、Facebookを多く利用しています。Facebookは、①本名登録を前提としている、②居住地・友達等を公表している人もいることから、安心してコミュニケーションをとれるため、販売促進の場でも多く使われています。ターゲットを絞った販促(例:川口市在住で40歳以上の女性 等)に適しています。

たとえば、さきほどご紹介したオンラインサロンをFacebookグループで活用している方もたくさんいます。私が存じている埼玉県行田市のマンゴー栽培・販売の個人事業主の方は、「トロピカルフルーツを育てる」というサロンをFacebookで立ち上げました。無料で、誰でも参加できます。

 

トロピカルフルーツを育てる

 

運営しているのは60歳をこえたマンゴー農家のご夫婦です!もともとご主人はタブレットを持ち歩き、動画を撮影してはYouTubeにあげていました。ですがただアップしていただけではアクセス数が伸びず、ファンと語り合えるグループを立ち上げることになりました。

マンゴー農家からトロピカルフルーツを育てるアドバイスをもらえること、同士と楽しくお話できることにより、メンバーのみなさんはとても楽しそうです。

このグループは無料運営ですが、Facebookでは会費を払った会員のみ閲覧できる限定グループも作成できます。

(3)Instagramの活用方法

若年層の方を中心に、画像を中心として活用されているのがInstagramです。写真を有効活用し、消費者の視覚にアピールできます。

私は先日、知人から贈り物をいただいたのですが、その詰め合わせの中にお店のカードが入っていました。印刷されていたQRコードにスマホからアクセスしてみると、そのお店のInstagramサイトにジャンプしました!

そうすると、何ということでしょう!私が知人からもらったセットの画像がアップされていたのです!「埼玉県の方が、東京で製菓学校の講師をしている方へのギフトに選んだ」と書かれています!ちなみに、私は東京の製菓学校で「店舗経営」の授業を教えています。

 

 

 

私は思わず嬉しくなり、その投稿に「受けとった本人」としてコメントを書き込みました。そうするとお店からも返信が書き込まれたのです。初めてのお店なのに、QRコードが結んでくれたご縁でつながることができて、とても親近感がわきました。

このやりとりをみた人は、「このお店はお客様を大切にしているな」「安心してギフトを送れるな」と考えることでしょう。ただ美味しいだけではギフトには選ばれません。このように「美味しいものを丁寧に扱う、信頼できるお店」というアピールをすることが重要なのです。

(4)改めて、まず消費者としてSNSを使いこなそう

私自身の体験を2つ、FacebookとInstagramでお話しました。このように、自分自身がいろいろなサービスを体験しているからこそ、SNSの使い勝手やそのお店の店主の人柄などが手に取るようにわかるのです。これはみなさんも全く同じですよね。

「時代の流れに追いつくためにも、自分の店にSNSを無理やりでも入れなくては・・・」といって形だけを導入しても、「心がこもっていない」ことはすぐにお客様に伝わってしまうものです。

無料で使えるSNSはお客様とのコミュニケーションの場として非常に有効であり、FacebookやInstagram以外にも多くのSNSがあります。自店の狙うターゲットによく利用されているSNSを選び、そこで写真や文章をこまめに投稿することをどんどん実践していただきたいです。

そして、実運用の前に、安定したインターネット回線等の環境整備、お客様を主語にしたSNS運用の心構え準備を忘れずに!そして、手間をかけて、写真や文章を投稿することで、無料のSNSでも有料の広告宣にはできないような販売促進効果がでることを体感していってください!ファンとしてのお客様が増えていけば、自然と会社・お店にも活気が出てくることでしょう。

 

 

シリーズ④ インターネット販促策でのDX活用(前編)

今回は、業種業態に関わらず、認知度向上・売上向上策を「無料」でどこまでできるのか?について、ご一緒に考えたいと思います。

InstagramやTwitterなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)やブログやWEBサイトなど、無料でスタートできる販促策がたくさんあります。
しかし、それらを効果的に使いこなすにはコツがあります。そこで、2回シリーズの前編として、「無料で利用するための前提条件」をお伝えします。

(1)LIVE配信の失敗

私の知り合いが、昨年、日本茶のECサイトを立ち上げました。もともとはお料理教室の先生をしていて、生徒さんたちに個人的にお茶を販売していました。
ですが、コロナ禍で対面のお教室が開けなくなり、オンライン講座ECサイトに業務を切り替えることになりました。

彼女はインターネット販促策を一生懸命勉強して、その後「インスタ※LIVE配信をするから見てね」という連絡がきたので、その時刻にパソコンの前に座ったのですが・・・
そこには「本日はFBライブにします」という案内が、一言・・・

※インスタ:Instagram(インスタグラム)の略。画像中心のサービスで、若年層の間で多く利用される。

FBとはFacebookのことなので、その友達のFacebookアカウントを見たのですが、配信が見つかりません。
結局。私はその日LIVEを見ることができませんでした。

あとから聞いたところ、その友達は自分のスマホからインスタLIVE配信をしようとしたのですが、スマホの機種が古くて「InstagramのLIVE配信をする最新バージョンのアプリ」が使えなかったとのことでした。
時間をかけて、LIVE配信用の話題を一生懸命考えたのに・・・。

この時、本来であれば、どんな準備をしてからLIVE配信をしなくてはいけなかったのでしょうか?それが前提条件となります。
マーケティングの勉強だけしていても、実際の配信はできないことを、ぜひみなさんもしっかり押さえてくださいね。

 

(2)無料サービスを利用するための前提条件

インターネットの様々なサービスを快適に利用するためには、以下の3つが不可欠となります。ここはどうしても費用がかかります。それでもビジネス投資として、なんとか整えていただきたいところです。

①インターネット回線

ビジネスでは、十分な速度が保証されており、かつ安定した回線を利用しましょう。
動画活用や、お客様とオンラインでお話する機会も増えてきますが、その際に回線のせいで「動画がカクカクする」「お客様とのやりとりが途中でプツンと切れる」などが頻発すると、信用問題になりかねません。

川口商工会議所では、回線を提供する事業者の紹介もしていますので、どうぞご相談ください。

②パソコンやスマートフォンの最新機器・最新アップデート

古い機器を使っていると、せっかく安定したインターネット回線を利用していてもその恩恵を十分に得ることができません。
今年の秋、これまで利用してきたWindowsパソコンのOSが「Win10 → Win11」に変わります。
そうすると、これまで利用していたアプリやソフトは利用できなくなる恐れもあります。

スマートフォンでも同じで、ソフトウェアのアップデートを必須とし、最新の機能を使いこなせる準備を整えましょう。
そうすることで、(1)で伝えたような「手持ちのスマートフォンから、LIVE配信ができなかった」というような残念な失敗は避けられます。

パソコンやスマートフォンで必要となる性能や機器選定については、主に以下のようなポイントで判断しましょう。
不明点があれば、どうぞ川口商工会議所にご相談ください。

機器本体の容量 データや画像を本体にどれだけ保存するか?
アプリをどれだけ搭載するか?
スマートフォンの利用目的 写真・動画撮影をするなら、高性能のカメラ搭載機器が望ましい。
業務用ソフトを動かす場合は、Androidスマホが必要になるケースが多い。
パソコンの利用目的 動画編集には、以下の性能を持つパソコンが望ましい
①高性能グラフィックボード、②メモリ(RAM)は16GB以上、③高性能CPU、④ストレージはSSDオンライン会議でバーチャル背景を利用するには、以下の環境が必要
バーチャル背景のシステム要件(Zoom)など、その他いろいろなポイントがある。
③セキュリティソフト

②で申しあげた古い機器やソフトウェアを利用していると、最新機能が使えないだけでなく、セキュリティ面でも危険度が高まります。

ビジネスでは個人情報を扱うため、情報漏えい等が発生した場合は、企業の責任が追及されてしまいます。
最近はメールによる攻撃もあり、うっかり添付ファイルを開いて感染してしまうケースも多く報告されています。

まずは以下のような対策を取りましょう。
実はセキュリティの設定には、従業員教育が欠かせません。どんなに機器的な対策をしても、人が意図的に不正利用した場合は対応できません。

従業員教育 セキュリティ教育の徹底 *「情報セキュリティ10大脅威 2021」の学習 等
テレワークで利用する機器の管理マニュアル作成 等
機器への対策 セキュリティソフトを導入し、最新状態を保つ
パソコンやスマートフォンには、パスワード(パスコード)を設定する 等

ここまで「無料でインターネットサービスを使うための前提条件」についてお話しました。
言葉遣いが分かりにくいものもあったかと思いますが、わからないことがあればどうぞ川口商工会議所にご相談ください。
みなさまのお仕事に最適なインターネット環境・機種選定のお手伝いをさせていただきます。

これらの環境が整ったら、いよいよ「インターネットを活用した無料の販売促進策」に着手してまいりましょう!

 

シリーズ③ 飲食業のDX

コロナ禍で大きな打撃を受けている飲食店。川口市は「まん延防止等重点措置(※7/27時点)」の対象区域に指定されており、酒類の提供がままなりません。
私も先日、川口市内で個人経営のイタリアンバルに行き、おひとり様で晩御飯をいただきました。
その時は18時半に店に入り、バタバタと注文せざるをえずあわただしかったのですが、おひとりさまだったのでワインを注文できました。
本当に久しぶりでした・・・!

このような厳しい中ですが、飲食店のみなさまに取り組んでいただきたいDX活用についてお知らせします。

(1)まずは「お店の営業時間・テイクアウトの有無」をWEBで知らせる

コロナ禍で休業を余儀なくされる店もある中で、私がいちばん気になるのが「今日、そのお店はやっているのか?」ということです。
せっかくお店の前まで行ったのに、「今日は閉まっていた」「テイクアウトはやっていなかった」という状況はガッカリしてしまいます。

このガッカリ感が、お店への愛着が少しずつ薄れる要因になってしまいます。
これを防ぐにはやはり、WEB上に「お店の営業時間」「テイクアウトの有無」を載せて、検索できるようにしてください。

川口駅近くの和食店である「割烹神谷」さんでは、店舗情報のページに「営業時間・入店の締切時間・ラストオーダーの時間」が明確に書かれており、安心してお店を訪問できます。

また、川口商工会議所サイトのトップページからリンクされている「飲食店応援プロジェクト川口」のようなポータルサイトを活用するのも有効です。
エリアごとの飲食店情報のお持ち帰り・宅配可能なお店がまとまって掲載されており、消費者の方が「この近くで、テイクアウトができるお店は?」と調べるのに便利です。

「ベジタ×バル0363」さんのページでは、「テイクアウト」「デリバリー(5,000円以上・昼間のみ)」と詳しく掲載されており、とても分かりやすいですね。
スマホからの検索であれば、電話番号からすぐに発信できます。
なお、お料理の画像をクリックすると、お店のWEBサイトにリンクされており、そこで地図や営業時間を確認できます。

*「飲食店応援プロジェクト川口」は、川口商工会議所の会員企業のみ掲載可能となっています。こちらより登録依頼をお願いいたします。

 

(2)非接触の会計には、やはりキャッシュレス

せっかくアクリル板での飛沫防止策を取ったり、席数を減らしたりしているのですから、やはり会計時にお札や小銭を触るのも避けたいですね。ここは小売業・サービス業のように、キャッシュレス決済を導入・継続したいところです。

この秋からは、これまで手数料無料だった大手のキャッシュレス決済サービスが「有料化」に踏み切ります。ですが、以下のような対策を取り、ぜひキャッシュレス決済は続けてください。

キャッシュレスサービス手数料有料化への対策
①手数料負担金額につき、過去の決裁件数・金額から予測して「毎月の手数料がいくらになるか?」を算定する
②お店のポイントカードなど、割引サービス・特典サービスを見直す
③手数料負担金額をカバーできるよう、メニューを見直す
(例:イチ押しメニューを値上げする、付け合わせの量を減らす 等)
④「削減できた金額」と「手数料負担金額」を突き合わせて、再度の見直しを図る
*見直しには、お客様を増やすための販促策も含みます。

私の行きつけの化粧品店では、この7月からお店のポイントカードが廃止になりました。
これまでは「来店ごとに1回スタンプ、3回溜まると100円値引き」という特典があったのですが、それが廃止になったのです。
ですが、私は逆に「これまでありがとう」という気持ちでいっぱいで、そのお店での買い物は止めません。新商品の化粧品サンプル等をいつもお試しさせてくれるので、何回通っても新しい発見があります。
また、カウンセリングも親切で、ほかのお店に乗り換えるつもりはありません。

チェーン店の飲食店は全国一律のメニューですが、皆様のお店ならメニューの見直しはできるはずです。
行きつけの店に通ってくださるお得意様なら、多少値上げをしても「この時期だけどがんばって」と応援してくださるはずです。
近隣の競合店との関係等でどうしても値上げができない場合は、付け合わせの変更や、器持参者への割引等、出来る限りの対策を進めてください。

我が家では先日、昨秋に亡くなった父親の初盆があり、送り火の日には奮発してうなぎ料理のテイクアウトをしました。
その際、「お鍋のような大きな容器をご持参いただければ、人数分の肝吸いをサービスいたします」とのことで、自家用車でお鍋を持って取りに行きました。
「配達の手間・容器の負担がかからないお客様には特典をつける」という切り口、さすがだなと感じた次第です。なお高金額となるため、支払いはクレジットカードでした。

この化粧品店や鰻屋さんのように、ぜひいろいろな対策を立ててみてください。
必要最低限しか現金を持ち歩かない層も増えており、お客様のお金の支払い方には十分に気を付けてウオッチしていってくださいね。

 

(3)さいごに

今回、特に「飲食店のみ」に通用する対策を2つお伝えしました。これ以外にも、どのような業種業態のお店も通用する施策もたくさんあります。

そこで、来月のこのコーナーでは、どのお店でも身につけていただきたい「無料でもここまでできる、インターネット販促策」をお伝えいたします。

DX導入・運用でお悩みがあれば、ぜひ川口商工会議所にお気軽にご相談ください!

 

シリーズ② 花屋、物販小売業のDX

日常生活を便利に楽しくすごすために、私たちの生活に欠かせない小売店。そこではどんなDX活用が進んでいるのでしょうか?

(1)花屋の体験

私はこれまで、地元の商店街のお花屋さんで1週間に2回くらい、季節にあった切り花を数本ずつ購入していました。そのお店は現金しか使えず、お財布を忘れてしまった日は購入できません。会員カードもありませんが、店主がお客様の顔を覚えていることで毎回話は弾みます。今年の3月は「今日は孫の小学校卒業式だったからサービスするわ」と言って、お花をオマケしてくれました!

かたや、私の母はショッピングモールにあるチェーン店でお花を買っており、支払い方法はいわゆる「サブスク(注1)」、スマホから会員登録をします。クレジットカード自動引き落としとなっており、毎回の支払いは不要です。あらかじめ決められたお花の中から一輪だけ選び、スマートフォンのアプリ画面を見せるだけなので、お店での会話はありません。

注1:サブスクとはサブスクリプションの略。定額料金を支払い利用する仕組み。サービス業ではインターネットの動画配信、小売業ではバッグや洋服の一定期間レンタルなどがある。

そんな中、少し離れた場所に若夫婦が小さな花屋を開業しました。QRコード決済のPayPayが使え、お店のレジ横には名刺サイズのショップカードが置かれており「定休日や営業時間がわかる」「ショップカードのQRコードからお店のInstagramにアクセスできる」ようになっています。最近、犬の散歩の途中でスマホしか持っていない時にその花屋さんの前を通ると、ついつい買うようになりました。またInstagramを使って「今日のおすすめの花」を紹介しており、見るたびにお店の存在を思い出します。

申し訳ないのですが、私は昔ながらの花屋で買うことが少しずつ減っています、開業した若夫婦を応援したいですし、スマホ決済が簡単にできるため、ちょっと不便な場所にあってもついつい寄ってしまうのです。

 

(2)3つの花屋のDX取り組み比較

この3つの花屋は、まさに同じ業態の小売業でも、「デジタルの活用」いう意味では違いがあります。開業した店は、ほとんど経費を掛けずにDX活用していることが分かります。

  老舗の店 開業した店 大手チェーン店
決済方法 現金のみ QRコード決済 月額自動引き落とし
レジ ガチャレジ(注2) タブレットレジ 高機能レジ
会員管理 なし Instagramフォロー スマホアプリ
WEBサイト なし SNSのみ 本格的なサイトあり

注2:ガチャレジとはインターネットに接続していない昔ながらのレジ

 

(3)まずは来店してもらう、そのためのきっかけ

今、巣篭り需要でECサイトやデリバリーの売上が増えています。そんな中で、お客様に来店していただくにはどうしたらよいのでしょうか。

まずは「来店するためのきっかけづくり」にDX活用をすすめてみませんか? 手書きのハガキをお店からもらうと大変嬉しいですが、切手代やはがき代の経費がかかり、さらにあて名書きをする従業員の負担も重いです。そこで、「一般のお客様向けには、無料で活用できるInstagramやFacebookなどの活用」「上得意客には手書きのお手紙を送る」という2段階方式に切り替えることができます。

 

(4)次は、気軽に決済してもらう

やはり消費者の動きにあわせたキャッシュレス対応も欠かせません。「QRコードを店頭においてお客様のスマホで読み取ってもらう」「補助金を使って安価にレジの入替を実施する」など決済業務のDX化を簡単にスタートできる時代です。店頭に「QRコード決済使えます」というポスターやのぼりを出して、お客様にアピールしましょう。

お釣り用の両替にかなりの費用がかかることからも、キャッシュレスへの切り替えを進めることをおススメします。

 

(5)さいごに

小売業の基本は「欲しいものが揃っている」ことです。川口在住の近隣客のニーズを知り尽くしているみなさまであれば、この点はしっかりできていることでしょう。

そのうえで「自店を忘れないでもらう・思い出してもらう」「購入までのお客様の負担を減らす」というステップでは、簡単で安価なDX活用がお役に立ちます。 小売店のDX導入、ぜひ川口商工会議所にお気軽にご相談ください!

 

シリーズ① 美容院やネイルサロン、サービス業のDX活用

美容院・ネイルサロン・マッサージ等の店舗を構えたサービス業の特徴としては、(1)お客様と一対一で施術をする、(2)お客様名簿を作成して固定客獲得を狙うことがあげられます。つまり、施術の技術力や設備はもちろんのこと、顧客を掴んで離さないことが必要です。

そこでこれらのお店ではどのようにDXを活用しているかをご紹介します。私は普段、地元で個人経営の美容院やネイルサロンに通っており、そのお店は店主・従業員合わせて数名で切り盛りしています。今回ご紹介するのは、それらのお店で私が実際に体験しているサービスです。

 

(1)スタンプサービスの自動化

紙のスタンプカードにハンコを押す仕組み、ハンコがどんどん溜まっていくと楽しいですよね。でも「カードを忘れた、失くした」場合はゼロからやり直しになってしまいます。そこで、お客様が持ち歩いているスマートフォンの中にスタンプ機能を持たせる仕組みがあります

画像1:LINEショップカード(LINE for Businessのサイトより引用)

たとえばLINEショップカード(画像1)です。LINEを使っているお客様が、自分のスマートフォンで店頭のQRコードを読み取るだけで、簡単にポイントがたまります。自社で仕組みを用意する必要はありません。LINEショップカードは、LINE公式アカウントの無料プランでも利用できるので、お試しで始めて見てもよいですね。

詳しくは<公式 LINEショップカードの活用方法|作成方法や導入事例>でご覧ください。

 

(2)予約受付の自動化

施術中に予約電話がかかってきても受けられず、貴重なお客様を取り逃がしてしまう…そんな思いはしたくありませんよね。またお客様は自宅で夜、お風呂上りにゆっくりスマホから予約したい・・・そんなニーズを持っています。

 

そこで活躍するのが、インターネット上の予約サイトの利用、また予約受付機能を持つレジの利用などの方法です。

予約サイトの利用では「ホットペッパービューティー」等が有名です。自社でWEBサイトを持たない中小サービス店では、自社サイト代わりにも利用できます。

パワーナレッジPOS(株式会社Groonyのサイトより引用)

また予約受付機能を持つレジとしては、パワーナレッジPOSなどがあります。

レジとしては高機能ですが、IT導入補助金を利用して安価に購入することも可能です。

これらを利用する際は、無料の場合もありますし、費用が掛かる場合もあります。費用対効果、手間の削減、顧客満足度の向上等の様々な視点から、「うちでも導入できるかな?」と研究してみてください。お客様が数名増えれば、月額利用料が回収できて、粗利益率の向上につながる可能性もあるのです!

最後に、直接お客様の体に触れるサービス業に従事する皆さん、感染対策に気を使って大変な毎日をお過ごしと思います。ですが、DXのチカラを使って、少しでも楽に業務をこなせるようにご一緒に考えていきませんか?ぜひ川口商工会議所にお気軽にご相談ください!