導入事例

第2回 DXのイロハ(2)DX、本当にうちの会社でもできるの?

ITコーディネータ・中小企業診断士 長戸 美樹

DX、言葉だけ聞くととても難しそうです。ですが、私たちが毎日使っているFAXやスマホの使い方を少し変えるだけでも、DXのスタートになります。

(1)スマホをビジネスで使っていますか?

日頃お世話になっているスマートフォン(以下スマホ)、個人用スマホを仕事連絡に使っていらっしゃる会社もあると思います。ですが、テレワークの進展やセキュリティの問題を考慮した場合、「インターネット接続費用・機器費用までを、会社負担で用意する」ことが主流になっています。スマホやパソコン、Wi-Fiルータなど、補助金等も利用してぜひ会社から従業員に貸与してください。

スマホのビジネス活用としては、以下のようなケースが想定されます。

紙書類をPDF化する
スマホで紙の書類を写真撮影して、そのままPDF化。お客様にPDFファイルとして、スマホから送信する。
現場写真を加工する
不良品の写真をスマホで撮影し、破損個所にデジタルで印をつける *参考資料1
チャットを使ってデータのやり取りをする
スマホでデータ送受信をして、スマホでスピーディにチェック・返信する *参考資料2
メールを送受信する
パソコンで受信しているメールを、スマホで閲覧・返信する
オンライン会議に参加する
Zoom等のアプリをダウンロードし、イヤホン等をつけて外から会議に参加する。周囲に人がいる場合は、自分の声は出さずに「耳だけ参加」とする。
アラートやアナウンスを受信する
工場の機械停止等をスマホで受信し、すぐに現場に駆け付ける

参考資料1:不良品を写真撮影した画像に、アプリを使って「印」と付ける

参考資料2:書類を添付して、チャットでやりとりする

参考資料1・2の画像加工では、LINE Camera(ラインカメラ)を使っています。普段皆さんがお使いのLINEの姉妹版アプリです。普段は顔のコラージュ等で使いますが、こうして仕事データの画像処理でも利用できます。無料で、ダウンロード・利用可能です。

参考資料2で利用しているチャットツールは、チャットワークです。国産のアプリになるので、日本語表記はもちろん、かゆいところに手が届く設定が可能です。費用は、有料プランで年間6千円かかりますが、メールの送信ミスもなく確実に相手に届きますので安心です。

また、チャットツールでは、文字を利用せずに「顔マーク(スマホのスタンプのイメージ)利用」により「読んだよ」とアピールすることが可能で、これも業務時間の短縮につながります。

今回は、資料1・資料2の二つだけ具体的な事例を紹介しました。その他の「オンライン会議参加」や「紙書類のPDF化」も、スマホでアプリをダウンロードしたうえでご利用いただく形になります。

ご興味がある方は、スマホの以下のアイコンから、ぜひご自分で検索してみてください。

iPhoneの場合:アップストア

Androidの場合:グーグルプレイストア

また最後に紹介した「工場内での機械停止を知らせる」場合は、単にスマホアプリを入れるだけではなく、機械側にセンサーを設置して、インターネット経由で情報を受け取る等の準備が必要となります。これはいわゆる「IoT」の活用であり、「自宅の家電を、外からスマホで操作する」ことの業務版です。

スマホ一つだけでも、ビジネス面でかなりの活用ができます。そして、スマホは常に身につけているので、わざわざパソコンの前に座らなくてもその場で操作ができるのが強みです。

業務時間の節約になり、お客様との距離も縮まりますので、ぜひ「自分たちの仕事で、スマホで楽になることはないか?」を考えてみてください

川口商工会議所で相談にのりますので、お気軽にご連絡ください。

(2)FAXのヤマに埋もれていませんか?

どの会社でも、いまだにかなり利用されているのがFAXです。私も「FAX送信と受信のために複合機の場所まで行くのが面倒だ」「毎朝出社すると、発注データのFAXが紙で届いていて、その処理作業だけで午前中が潰れてしまう」など、FAXの相談をよくうけます。

紙のFAX送受信は資源の無駄でもあり、シュレッダー等の後処理も大変です。「紙を使わないFAX送受信」に取りくんでみませんか?

こちらも解決方法が数種類ありますので、簡単にご紹介いたします。専門用語がいくつかありますが、まずは読んでみてください。

複合機と文書管理システムをつなげる
パソコンで作成した原稿を、そのままFAX送信

FAX番号で受信したデータを、紙で打ち出さずにクラウドの文書管理システムに保存し、各自が自分のパソコンで閲覧する
FAX受信した紙データをOCRによりデータ変換
OCRにより、手書き文字でもデータとして読み取る

読みとったデータはRPAを利用して、自社のシステムに自動で取り込む
FAXのメール転送サービスを利用する
届いたFAXを、メールにPDFとして添付してくれるサービスを利用する

ここで、「クラウドの文書管理システム」「OCR」「PRA」等の用語がでてきました。すでに用語をよくご存じの方、言葉は聞いたことあるけれど詳しいことはわからない・・・反応は、人によってさまざまであろうと思います。ですが間違いなく言えることは、今の時代は、これらのようなさまざまな仕組みを、安価に簡易に導入できるようになっているということです。

これらを導入してみたい場合は、ぜひ川口商工会議所にご相談ください。専門家が適切なITツールのアドバイスをいたします。

また、異なる視点の対策として、①オンライン上での受発注システムに切り替える、②メールやチャットのやり取りに切り替える 等の「FAXを使わない業務方法に切り替える」ことも有効です。ただし、切り替えには取引先の同意が必要であり、ビジネスの場面では強引な切り替えはもちろんできませんのでご留意ください。

(3)まとめ

今回は、スマホとFAXについてご説明しました。この2つについては、これまでご紹介したとおり、経費を最小限に抑えた業務の省力化が可能なのです。これは、立派なDX活用の一歩です。

今日のテーマを、前回お伝えした「埼玉県DX推進支援ネットワーク」で利用している図で改めて考えてみましょう。

紙のFAX送受信から「デジタル受信」に変える、工場でIoTを利用して「アラートやアナウンスを受信する」のは、上記の図で「レベル1」に当たります。

「人手をかけている作業をデジタル化する」、まずはここからのスタートでよいのでです。DX、うちの会社でもできますよ!ぜひご一緒に最初の一歩を踏み出してみませんか?

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